お盆のころに野辺に咲く花に
“キツネノカミソリ”というのがあるそうで。
ヒガンバナ科で、秋のお彼岸の頃に咲くマンジュシャゲと同様、
真っ直ぐな茎の先に、ユリみたいな形の、
赤とオレンジの間みたいな色の花が咲く。
春のうちにまずはスイセンのそれのような長い葉が出て、
だがそれは夏までに枯れてしまい、
茎の上へ蕾が出て来て、お盆の頃合いに咲くのだそうで。
ウチにも紫の、そういう咲き方をする花がありますが、
毎年毎年健気に、しかもちょっとゴージャスなのが咲くので、
母と楽しみにしておりますvv
あれってなんて名前のお花なんだろうなぁ…。
「おいおい、のっけから話が逸れとるぞ。」
ああ、すみません。(苦笑)
術師のおやかま様ともーりんのやりとりに、
甘づるの露をあつめた蜜を舐めて悦に入っていた仔ギツネ坊やが、
頭の上へ結った お尻尾みたいな房を揺らしもって、
ひょこりと小首を傾げて見せる。
「きちゅね?」
「うん。
お花の色がネ、キツネの毛並みに似てるからだって。」
…と、ググッたら書いてありましたが。(おいおい)
夏の花といや、朝顔にフヨウアオイ、
ノウゼンカズラに オダマキにドクダミ、
キョウチクトウとか オニユリとか笹ユリとかありますね。
万両もこの時期に咲きますし、
イヌタデにクズに萩は もちょっと後かしら?
ヒマワリ…は さすがに、
日本へは近代になってから入って来た花なんでしょうねぇ。
裏山に自生するいろいろなお花を見ているせいか、
セナくんもくうちゃんも花には詳しくて。
あれも見たこれも咲いてたと、
そりゃあ無邪気に指折り数えていたけれど、
「花の色々もいいが、
それよか雑草の生育が半端ねぇのがな。」
脇息に肘をついての、ややもするとうんざり顔にて。
切れ長の目許をう〜むと細め、
広間の前へと広がる庭を眺めやるお館様だったりし。
何も 枯れ山水だの寝殿作りに映える築山に…などと、
構図に凝りたいわけじゃあない。
むしろ面倒がって手を入れない張本人であり、
そんなお館様の意向に合わせてのこと
…というのは言い過ぎながら、
勘気の強い主人の在宅中に、
その居室の広間の前という鼻先でごそごそ草引きもなかろうと。
そんなこんなで、
雑用担当の雑仕らもなかなか手が出せぬままとなり。
気がつきゃ くうちゃんの背丈どころか、
瀬那くん腰までという深さまである剛の者が育っている、
文字通り“雑草根性”の逞しさよ…と来て。
「池のお手入れだけは欠かしておりませんから、
それで余計に育ちがいいのかもですよね。」
一応、片隅の一角に設けられている小さな池があって。
夏場は特に藻が増えたり水が濁ったり、
何と言っても蚊の発生の元にもなりかねないものの。
葦簾で蓋をし、水が流れ込む水路を毎日確認しと、
ここだけは むしろ
手を抜くと主人が機嫌を悪くする場所だと
雑仕らの間でも知れ渡っていてのこと。
怠った当番はどんな仕置きを受けるか儂は知らんぞという、
仕丁らの頭の脅しもよく効いての、
そこから薮蚊が大発生…とかいう惨事だけは免れているのだけれど
…と、言いたかっただけの書生くんだったのに。
「〜〜〜〜〜。///////」
どうしたものか、不意に口許をうにむにとたわめると、
何か言いたげな、
それでいて言葉が出て来ないのが自分でもどかしいような、
そんなようなお顔になってしまった蛭魔だったりし。
「??」
「おやかま様?」
どしたの?と無邪気な坊やがキョトンとしたが、
この、口八丁でも
数多いる大タヌキらという権門らを
やりこめておいでの覇者たるお人が、
何故だか口ごもっての“困って”おいでなのが止まらなくって。
「?」
「あ〜、まあその、なんだ。」
話の途中から、そういえばそちらさんもまた、
視線が落ち着かぬ蜥蜴の総帥様が、
割って入って来ての曰く、
「虫が沸かぬようにっていう肝のところを、
そういや皆へは言ってなかったの、
今頃 気がついてんだよ、察してやんな。」
上手に撫でつけた黒髪を、
大きい手でほりほりと掻きつつのお言いようは、
どこか とってつけたような内容のようでもあったれど。
勘気の強いお館様が、
いつもの調子で
足蹴りとともに否定するという運びにならなんだから、
“……そういうこと、なのかなぁ?”
微妙な空気が漂ってないこともなかったが、
ご本人たちが、否定も照れ隠しの大暴れもなさらぬ以上、
勘ぐるなんてお行儀の悪いことまでしようとは思わぬ、
セナくんやくうちゃんだったけれど。
「〜〜〜〜〜。//////」
「まあその、何だよな。///」
何でまた、急に音無しのお二人になっちゃったのかは、
やっぱり二人には判らなかったけれど。
何だよ、何でもねぇよと、
お互いの間でも微妙なやり取りをなさっており。
“ここへ割り込むのはもしかして……。”
世に言う“野暮天”になるんじゃなかろかと、
最近そういう感覚も練れて来ておいでの書生くん。
悪い雰囲気じゃあないのは確かなんだからと、
言及しないで差し上げちゃう、
そんな盛夏の昼間どきでございますvv
残暑お見舞い申し上げます。
〜どさくさ・どっとはらい〜 12.08.13.
*何でいきなり照れまくりあってるお二人なのか、
よろしかったら『寒池の月』参照してくださいませvv
こういう、ムーディなお話も書いてたなぁ…。
*いやはや、まだお盆は来てなかったんですな。
それにつけてもという猛暑が続くわ、
ロンドン五輪は
期待してたわけじゃなかったのが面白くて、
ついつい夜更かしするわで。
日本にいながら時差ぼけです。
眠くてしょうがありません。
それも一応今日で一区切りのはずなんですが、
この暑さじゃあやっぱり寝不足の日々は続きそうで。
皆様もどうか、お体ご自愛くださいませです。
めーるふぉーむvv 

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